2013年6月19日水曜日

第14回 ゲームプランナーの「伝える技術」4つの基本


 こにゃにゃちは!かいぽんです。

 以前、ゲームプランナーに必要なスキルは、「考える」「伝える(共有)」「やる(実行)」「試す(トラブルシュート)」だ、という話をしました。

<参考エントリ>
第2回 ゲーム企画屋さんに必要なスキルとは(1)
第3回 ゲーム企画屋さんに必要なスキルとは(2)


 今回はそのなかの「伝える」技術のうち、4つの基本重要スキルについてのお話しです。

 ものごとをチームメンバーに伝え、その内容をチーム全体で共有するには、文書作成(ドキュメンテーション)がとても大事です。プランナーの仕事とは、この文書作成そのものである!と言っても過言ではないぐらい重要です。

 さて、この伝えるための文書作成における基本は、以下の4つに集約されると考えています。


<4つの基本>

  1. リストを作る
  2. 表を書く(マトリクス)
  3. 図を描く(チャート)
  4. 名前をつける(命名)

 プランナーの仕事とは、いってみればこの4つだ!これだけは絶対にできるようになっておけ!なにかに困ったら、この4つのうちのどれかで解決できるはずだ!というのがわたしの教えです。


1.リスト


 リストとは、つまり箇条書きです。直前に書いた上の4つの項目もリストです。リストに書く内容、つまりリストの種類はおもに2種類に大別されます。

 わかりやすいほうの種類からいうと、たとえばアイテムリストや武器リストなど、ゲーム仕様関わる内容のリスト。これらは「仕様リスト」といいます。ゲームの仕様概要を箇条書きにした文書なども、リストといえるでしょう。

 その他にもう1種類、タスクリストやバグリスト、発注リストなど、ゲーム制作のプロセスに関連する内容のリスト。個人的にはこれを「やることリスト」と呼んでいます。備忘録や更新履歴などもゲーム制作には欠かせないリストといえます。

 リストはおもにテキストエディタを使って記述します。エクセルを使う人もいますが、わたしはいつもテキストエディタです。
 ゲームプランナーは、とにかくなにをするにもまずこのリストを記述してから取りかかるのが基本中の基本の手順、といえます。すべての作業の第一歩がこのリスト作成です。

 なんでもかんでもまず箇条書きにしましょう。箇条書きにして悪いことはなにひとつありません!


2.表(マトリクス)


 表は表です。マトリクス表ともいいます。リストとリストの組み合わせが必要な事柄は、表に展開することで非常に簡潔に分かりやすく記述することができます。

 例えば以下の2つのリストがあり、それぞれ衝突判定があるとします。

自機の武器リスト

  • メインショット1
  • メインショット2
  • サブウェポン1(対地ミサイル)
  • サブウェポン2(対地レーザー砲)

自機以外のオブジェクトリスト

  • 空中敵
  • 空中障害物
  • 地上敵
  • 地上障害物
  • 敵弾1
  • 敵弾2
  • アイテム


 これを表に展開すると、たとえばこのようになります。(あくまでもサンプル例なのでゲーム的な内容についてはご容赦を)

表のサンプル

どうですか、このわかりやすさ感!さすがやでえ!

 この対応関係を、文章や箇条書きで説明するには非常に冗長になってしまいますが、表にすることで簡潔確実に伝わります。(サブウェポン2の対地レーザーは特別で、障害物を貫通して空中敵をもなぎ倒します!という例です)

 表は、エクセルやパワーポイントなどを利用して書きます。(上図はパワポで書きました)

 より実践的なテクニックとしては、一旦テキストエディタでタブ区切りで表組みを作っておき、エクセルにコピペして整形する、といった方法も有効です。

 なお、これら説明用の表のほかに、実際のデータ実装にエクセルを利用してプランナーが各種の表を作成するケースもゲーム製作現場では多くみられます。この場合は「伝える技術」というよりも実装の技術領域ですね。

 文章やリストの内容を、表のかたちに展開するスキルはとても重要です。

 また上記の、仕様説明以外にも、作業プロセスを表の形にして管理するケースもあります。

 たとえば、ステージ制作の作業工程(仮モデリング→コリジョン作成→イテレーション→本モデリング→テクスチャ作成→ライティング)などの進捗を各ステージごとに管理するには、リストでも可能ですが、表形式にしたほうが便利です。


3.図(チャート)


 図を使って説明したほうがよい事柄、UIの指示書、ゲーム進行のフローチャートなどは、簡単なチャート図を使って伝達するのが簡明確実です。
じゃんけんの関係のチャート図サンプル

 手書きのポンチ絵でもいいのですが、おもにはパワーポイントやエクセル、VISIOなどのツール類を使って作成するのが主流ですね。

 じゃんけんの関係は文章で説明してもシンプルなので、このぐらいのことをわざわざ図に描くかどうかは作業コストとの相談になりますが、より複雑な関係でもシンプルな図に展開できれば、伝達コストは大幅に圧縮できます。

 また、ゲーム進行を記述するフローチャートは超重要です。ゲームプランナーたるものフローチャートは絶対に書けるようになっておきましょう。まあそんな難しいものではないですが。


4.名前(命名)


 名前といっても、キャラクター名やアイテム名を考えることではありません。たとえばさきほどの「じゃんけんの関係」というのが、ここでいう「名前をつける」ということに該当します。

 格闘ゲームで、敵を飛び越えてガードの裏から攻撃することを「めくり」と呼ぶ。
 レベルエディタで、樹木やギミックを置いていく作業のことを「田植え」と呼ぶ。(昔のタイトーではw)

 これらはすべて、名前をつけることによって、わかりやすく説明できる例です。

 複雑な仕様や作業に適宜なわかりやすい名前をつける、命名することで、その後のハンドリングが非常にしやすくなります。

 ほかにも、よくあるわかりやすい例では、「新機軸!ほにゃららシステム搭載!!」とかの名前といってもいいでしょう。セールストークになるならないはまったく別の問題ですが、すくなくとも開発チーム内ではこれらの呼び名があることによって、コミュニケーションのロスが大幅に防げます。

 名前をつける、意外と重要です。


まとめ


 よく出来たプランナーは、企画書や仕様書に文章をほとんど書きません(シナリオライターは別ですがw)。

 リスト、表、図、命名の4つのツールですべてを説明するのが訓練されたプランナーというものであります。

 ゲーム仕様を文章に書いて説明するのは下策であり、リストや表図に展開して簡潔に伝えるのが上策というものです。そもそも3行以上の文章書いてもだれも読まないし!


 今回は、伝える技術のお話しでした。いかがでしたでしょうか。文章だとやっぱり説明が大変ですね。
それではみなさままたお会いしましょう。ばいなら~!

2013年6月18日火曜日

第13回 アイデアとは、目的と手段のタペストリーだ~アイデアの正体とは(5)


 こんちゃーす!おひさしぶりでございます。
今回のネタは「アイデアの正体」シリーズ最終回!

 アイデアとは、目的と手段が織りなすタペストリーだよおっかさん。

というお話しであります。
これまでのINDEX
その1 アイデアの正体とは(1)
その2 良いアイデア、悪いアイデアの見分け方~アイデアの正体とは(2)
その3 アイデアはタコ足なのよね~アイデアの正体とは(3)
その4 目的が先か、手段が先か、それが問題だ・・・~アイデアの正体とは(4)
今回(最終回)→ アイデアとは、目的と手段のタペストリーだ~アイデアの正体とは(5)

エジソンの電球


 これまでご説明してきた「アイデアとは目的と手段の組み合わせ」。これを、またまたエジソンの電球を例にとってみましょう。

白熱電球を作って夜を明るくする
エジソンの電球

 目的は夜を明るくすること、その手段は白熱電球を開発すること、です。さて当時の電球といえば、すぐに燃え尽きてしまい、とても実用的といえるものではありませんでした(電球そのものはエジソンの発明ではなく、当時すでに存在していました)。白熱電球をつくるといっても、ほいっと簡単につくってはいすぐ照明に使える!というわけにはまいりません。

 ここにエジソンの発想の偉さがあります。エジソンはすぐに切れる電球をなんとか長寿命化し、白熱電球による夜間照明を実現しようという、イノベーションを画策したのであります。


チャンクダウン


 ある手段があったとき、その手段を目的としてさらに下層の手段を発生させることができます。
この場合、「白熱電球をつくる」という手段が目的に変化して、さらに下層に「長寿命化する」という手段を生み出しています。

白熱電球を長寿命化する
下層の手段が生まれる

 さて、ここで「長寿命化する」という手段もさらに目的化して、もう一段下層の手段を生み出してみましょう。

さらに下層の手段を生む

 ガラス球を真空化し、さらに京都の竹を使うなどフィラメントを工夫する、という手段が生まれます(実際には試行錯誤のすえ生み出されたわけですが)。この場合の手段はタコ足、ひとつの目的から複数の手段が生える、になりました。

 このように、手段を目的化してそれを達成するための手段を掘り下げていくことを、専門的には「チャンクダウン」「ブレイクダウン」などと称します。なおぼくはチャンクダウンと呼ぶ方が好きですね。なんかおいしそうだから。


ボトムアップ


 チャンクダウンとは別に、目的を手段と捉えてさらに上位の目的を見出していく、こともできます。これを「ボトムアップ」といいます。(なおこの言い方はあんまり好きじゃないんで、もっといい表現ないかな)

 今回のエジソンの電球の例でいえば、目的「夜を明るくする」とは、いかなる目的の手段たりうるのか?と問うことがボトムアップです。その答えとしては「世の中を豊かにする」という新たな目的につながります。

 さらに「世の中を豊かにする」という目的を手段とし、ふたたびボトムアップしていけば「ワシが儲ける」だったり「オレ様の天才を証明する!」だったりに行き着きます。

ボトムアップしていく



 余談ですが、さらにこれらの目的を手段とし、さらなる上位の目的を見出すボトムアップを繰り返していくと・・・、最終的には「宇宙平和」だとか「神への挑戦」だとか、哲学やら宗教やらの領域に行き着くのでオススメしません。ボトムアップはいいかげんなところでやめておきましょう。


ボトムアップからの~、チャンクダウン!


 ボトムアップした目的からまったく新たな手段を生み出すことができます。これが必殺技のボトムアップからの~チャンクダウン!です。(個人的にはアイデアドリフトと呼んでますが)

 エジソンの例でいえば、世の中を豊かにする(目的)に対しては、蓄音機をつくったり(手段)、映写機を発明したり(手段)、電話を開発したりすること(手段)も、夜を明るくすることにおなじ「手段」になります。

 そういえばエジソンは、そのライバルであるもうひとりの天才技師ニコラ・テスラとは対立していました。テスラの野郎をぶっつぶすには、直流電流の最強を証明するのが最適です。そのためエジソンは交流電流をつかった動物処刑実験を画策したりとかしてたそうです。

 そういった話を図にすると、以下のようになります。

エジソンの脳内メーカー??

 エジソンが実際にはどのような発想をして数々の発明をおこなったのかは知りません。これまでのはなしはすべて個人的な想像です。今回はこの図が正しいかどうかは問題ではなくて、このようにロジックツリーに展開して考えるのがだいじだよ。というサンプルですので、そのへんご留意ください。

 なお、ボトムアップからの~チャンクダウン!と同様に、そのまったく逆を行う、チャンクダウンからの~ボトムアーップ!という技もあります。これもアイデアドリフトの一種。
 上の図でいえば、交流で処刑実験という手段から「見物料をとって見世物小屋を経営する」みたいな別の目的を見出す技ですね。


まとめ


 アイデアとは、目的と手段が織りなすタペストリーだよおっかさん。

アイデアツリータペストリー


 すばらしいアイデアを生む作業とは、このようなアイデアツリーのタペストリーを織り上げていく作業にほかなりません。

 ・手段を目的化して掘り下げる、チャンクダウン
 ・目的を手段ととらえ上位目的を見出す、ボトムアップ
 ・ボトムアップしてから新たな手段を見つける、ボトムアップからの~チャンクダウン!
 ・生み出された手段から新たな目的を見出す、チャンクダウンからの~ボトムアーップ!

 この4つの技を使いこなして、みなさんも自分の「アイデア」を織り上げていきましょう。わたしもいつも使ってます!


おまけの余談


 アイデアタペストリーは「マインドマップ」に似てますね。でもマインドマップは、チャンクダウンには強くてもボトムアップには弱い、という点が残念です。多くのマインドマップはトップから書き始めることを推奨しているようですので。適当な中間点からスタートできればいいのですが。
 ましてやボトムアップからの~チャンクダウン!などの必殺技に対応してるマインドマップツールってちょっと見たことがないかもです。もっとも使い方を工夫すれば似たようなことは可能かもしれません。
 アイデアタペストリーを描くための強力なツールの登場が待たれますね。


 今回のお話しで、アイデアの正体シリーズ全5回は終了です。長かった・・・。みなさまおつきあいありがとうございました。どうでしたか面白かったでしょうか。


 それではみなさままた会いましょう、ばいちゃ~!

2013年2月1日金曜日

第8回 「スイミング・プール」にF2P(フリー・トゥ・プレイ)の真髄をみた!


 金沢に「金沢21世紀美術館」という現代美術館がある。

 多くの公立美術館が赤字経営で苦しむなか、この21世紀美術館は2004年のオープン以来毎年のように200万人以上の入館者数を集めており、地方公共団体が運営する美術館のひとつの成功モデルとして有名となっている。

 美術館の建屋自体がひとつの現代アートといったかまえで、円形の建屋の周囲全面がガラス張りで未来感溢れたつくりとなっており、内外部からの見通しよく、またその敷地も塀壁ない開放的な芝生の空間となって周囲の街並みのなかに佇んでいる。

金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館
建屋内より

 この美術館の特筆すべきは無料開放ゾーンの充実ぶりである。美術館内のかなりの部分、数多くのアート作品が無料ゾーン内に展示されており、その開放的な敷地の雰囲気とも相まって市民のだれもが気軽に立ち寄り、アートに触れることができるよう配慮されている。

 全体としてこの21世紀美術館は、現代美術アートというよりはいっこのアミューズメントパーク的な趣きがあり、美術に興味のない方や子供たちにもなかなかに楽しめるつくりになっている。みなさまにおかれましても金沢を訪れた際には、ぜひ立ち寄られたい。



 スイミング・プール


 その21世紀美術館の恒久展示品のひとつにレアンドロ・エルリッヒ作「スイミング・プール」という作品がある。

スイミング・プール
レアンドロ・エルリッヒ 「スイミング・プール」

 一見するとへんてつのない小さなプールであるが、よくみると中に人?人が??
ええ~?どうなってんの??

 というアートなのであります。

 いまひとつ解説をすると、このプールの上側(写真の撮影位置)は無料ゾーンに含まれていて、タダで見ることが出来ます。

 しかしながらプールの下側に行くには、企画展または特別展の有料チケットを買わないと立ち入れません。見るだけなら無料だけど、プールの中に行くには有料だよ~。てな仕組みになってます。



 これはまさにゲームでいうところのF2P(フリー・トゥ・プレイ)ではなかろうか?


 と思いませんか?すごいよね。美術館で。

 この展示をよく見てみると、プールの上にいる無料プレイヤーと、プール内にいる課金プレイヤーとが、水面越しにお互い手を振り合ってコミュニケーションとったりして楽しんでいます。

 無料プレイヤーと課金プレイヤーの両方がいることではじめて成立すると、そんなインスタレーションになっているのです。(こういう展示物は21世紀美術館でもこのプールだけです!)


 すなわち期せずして、課金プレイヤーがいなければ成り立たない展示物、となっているわけです。

 ここで注意していただきたいのは、これは一般によくいわれる、「お金を払ってるプレイヤーがいるからこそ商業的に運営がなりたち、ために無料プレイヤーも楽しめる」、という文脈とはまったく異なっているという点です。

 というのも、無料プレイヤー側からしてみれば、課金プレイヤーが水の底に沈んでいるのを見てアッヒャッヒャwwwとかいって楽しむ作品であり、もし課金プレイヤーがいなければ(水底に誰もいない状態を想像してみてください)、単なる何の変哲もないプールにしかみえません。「これじゃ出来損ないだ。アートにならないよ」(山岡士郎風)ということになってしまいます。

 そして水底にたむろしてる課金プレイヤーを見て、「自分もそこへ行ってみたい」というモチベーションが無料プレイヤーにも生まれるわけですが(これはわりと普通の導線ですね)、さてお金を出して課金プレイヤーとなって水底に行ったならば、こんどは上を見上げて無料プレイヤーと戯れなければ今一歩楽しくないわけです。

 このような意味で、無料プレイヤーと課金プレイヤーが互いに互いを見世物とする構図が生まれ、両者がともに存在しているからこそ、両者ともが楽しめる、という寸法になっているのです。


 そこにこそ僕はF2P(フリー・トゥ・プレイ)の理想形を感じました。


 重ねて強調しますが、特に課金プレイヤーが無料プレイヤーにとっての見世物コンテンツになる、という点は、実に平和的?でたいへん素晴らしい仕組みではないでしょうか。

 この構造を実際のゲーム設計として組み込むことは実現の難しい課題といえますが、すくなくともF2Pの未来になにかしらのありようをみた思いであります。


おわりに


 今回のお話しはいかがでしたでしょーか。普段とは違う硬い書き出しで始まってどうなることかと思いましたが、それはさておき、美術館ひとつとっても、ゲームデザインのヒントになることがけっこうあるものですね~。 

 さて、かように21世紀美術館は素晴らしい施設で、「スイミング・プール」以外にも、数々のたのしげな展示品があります。金沢を訪れた折にはマジぜひ行ってみられるといいかと思います。場所も金沢城や兼六園のすぐ隣だから行きやすいしね!ぼくもしょっちゅう行ってるよ!

 あ、あとね。この「スイミング・プール」、雨がふっちゃうと上側(無料ゾーン側)は立ち入り禁止となります(滑るかららしい)。訪れる際には天候にもご注意ください。(他の展示物は雨でも大丈夫ですが、屋外展示もあるので晴れるにこしたことはありません。)

 それではみなさんダスビダーニャ!


金沢21世紀美術館公式サイト

2012年12月12日水曜日

第12回 目的が先か、手段が先か、それが問題だ・・・~アイデアの正体とは(4)

 こんばんわんこ!かいぽんです。
だいぶ更新の間があきました。みなさまお元気ですかー。今回は、アイデアの正体シリーズ第4回になりますよ~。
これまでのINDEX
その1 アイデアの正体とは(1)
その2 良いアイデア、悪いアイデアの見分け方~アイデアの正体とは(2)
その3 アイデアはタコ足なのよね~アイデアの正体とは(3)
今回→ 第4回 目的が先か、手段が先か、それが問題だ・・・~アイデアの正体とは(4)


 さてさて。「アイデアとは、目的と手段の組み合わせである」と、これまで言ってきました。

アイデア基本形の図


 みなさーん。よいアイデアを考案するにあたっては、


目的のためには手段を選ばず!


という乾坤一擲の気概が必要です。これはわかりやすいですね。
しかしその一方で、


手段のためには目的を選ばず!


という考え方も成り立ちます。

 ・・・んんん? じゃあ、アイデアを整えるときって、目的と手段とどっちを先に決めたほうがいいの???という疑問が当然のように湧いてくると思います。

 鶏が先か卵が先か・・・ 気に入った女性だから好きになるのか、好きになったから気に入るのか・・・、卵と恋愛は難しい・・・ なんだか考えていると青春の苦悩に突入してしまいますね、これは困った。


 しかし安心してください。その結論は簡単です。


目的と手段、どちらが先でも構わないッ!


 これですよこれ。
 要は「目的と手段の組み合わせ」がどれだけ合理的にフィットしているかだけが重要なのです。その点だけでいえば、どちらが先に来ても構いません。そのほうが柔軟な発想ができますし!


■手段に目的を合わせるのもアリだ!


 目的のためには手段を問わず!という考えかたはごくまっとうですよね。反面、手段のためには目的を問わず!というと、なんだか本末転倒ってイメージがあると思います。でもね、世の中にはそれで成功したケースってのがけっこうあるのです。

 
 かつてぼくがデザインした『キャメルトライ』というゲームでの実例をご紹介しますね。

 どんなゲームか知らない方は →こちらの動画で把握!



 『キャメルトライ』は画面を回転させてボールをゴールに導くゲームです。このゲームを発想する際に最初に頭に浮かんだのは、”回転スクリーンを使って迷路を回転させる迷路ゲーム”ということでした。つまり、”画面を回せ!ボールを転がせ!”という手段のみがあった状態でした。

 ちなみに回転スクリーンっていうのは、2Dの背景スクリーンを回転させることができる当時最新鋭のハードウェア技術のことです。

 さて、画面を回すのはいいですが、このままではこれはアイデアとして成立していません。単なる”思いつき”のネタレベルでしかありません。

 (あるいは、”回転スクリーンを使ってなんかおもろいことをする”という、見えないインビジブルな目的が設定されている状態です。たしかに回転スクリーンで回せるのはおもろいですけど、この目的は典型的な”作り手の都合”、”技術のみせびらかし”であって、商品としての目的としては弱い状態です)


 そこでぼくは、”画面を回す”という手段はそのまま生かした状態で、”レースゲーム”という目的を設定しました。(正直にいうと天才マーク・サーニーの名作『マーブルマッドネス』からインスパイアを得たわけですが)

 かくして、『キャメルトライ』はタイムレースという目的を得て、制限時間内にスタート地点からゴール地点まで走破するゲームへと昇華されました。後付けの目的と、最初からあった手段の、素敵なマリアージュとなったわけです。えっへん!(自画自賛)

 ちなみにタイムレースっていうゲームデザインは、ビデオゲーム黎明期から存在する非常に古い手法です。
 画面を回転するという(当時としては)新しい手段と、タイムレースという古いありがちな目的を組み合わせた点でも、『キャメルトライ』はヒットするアイデアの条件を兼ね備えたものでした。今思えば。(参照→第2回 良いアイデア、悪いアイデアの見分け方~アイデアの正体とは(2))



■まとめ


 目的が先か、手段が先か、どちらが先かをこだわることに意味はありません。目的は手段のために!手段は目的のために!こだらわずにベストマッチする組み合わせを考えましょう。

 そのときにキーとなるのは、ズバリ直感です。ええ~?!ここにきて直感・・・だと・・・?!

 いえいえ、目的が主で手段が従なのか、それとも目的が従で手段が主なのか、その判断は直感で行なうのです!

 先の『キャメルトライ』の例では”手段が主”です。”画面を回す”という手段が主だ、これだけは絶対に変えられない!と、ぼくがそう判断した合理的な理由はなにもなく、直感以外のなにものでもありません。直感を強く信じよう!


 そのうえで、従たる目的は、あるいは従たる手段は、主のほうを生かすためにどんどん取り替えろ!っていうのがぼくのおすすめするアイデア発想メソッドです。

 そういう意味で、目的と手段、どっちが先にあっても(どっちが主でも)、アイデアの世界ではどちらでも構わないのであります!(恋愛でもね!)


 今回のお話しはおもしろかったでしょうか~。なにかみなさんの参考になれば幸いです。
さて次回はいよいよアイデアの正体シリーズの最終回!ここまで長かったね!
デザインとは、アイデアが織りなすタペストリーだ!ってお話しをしますよん。

 それではアスタルエゴ~!


2012年11月22日木曜日

第11回 アイデアはタコ足なのよね~アイデアの正体とは(3)

 うっほほ。かいぽんです。
すこし更新の間があきました。みなさまお元気でしょうか。今回は、アイデアの正体シリーズ第3回になります。アイデアのカタチのバリエーションについてお話ししようとおもいますー。
これまでのINDEX
その1 アイデアの正体とは(1)
その2 良いアイデア、悪いアイデアの見分け方~アイデアの正体とは(2)
今回→ 第3回 アイデアはタコ足なのよね~アイデアの正体とは(3)


 さてお約束の毎回のおさらいですが、アイデアとは


アイデア = 目的 + 手段


 であります。重要だから何度でも書きます。
このように、アイデアを目的と手段に分割したものとして考えることにより、アイデアを評価したり発展させたりなどがロジカルかつ手軽に行えて超便利だよ!というのがぼくの推奨しているメソッドになります(*^▽^*)

 さて、それを図に書いたものが、前回からご紹介しています、下図になります。

アイデアツリー基本図

アイデアツリーのバリエーション


 勘の良い方はもうお気付きでしょうが、この目的と手段は、必ずしも一対一で対応するわけではありません。

 あるひとつの目的を達成するために、複数の手段を組み合わせるなどといったことはよくありますよね。こんなかんじで。

アイデアツリー基本図 「タコ足」

 手段が「タコ足」のように目的にくっついているイメージですね。

 例えば仮に、「ソニーがアップルを叩き潰しかつての輝きを取り戻す!」という目的がある場合、その手段として

 「素晴らしいPlayStationウォークマンフォンを開発する」
 「素晴らしいPlayStationVAIOブラビアを開発する」
 「それらをシームレスに統合したネットサービスを開発する」

といった複数の手段を実行しなければなりません(架空の例ですよ、あくまでも!)

 そういったケースの場合、目的に対して上図のよう複数手段がどんどんぶら下がる形になります。


 さて、タコ足とは逆に、ひとつの手段で複数の目的を達成できる、といったケースもあり得ます。

アイデアツリー基本図 「一石二鳥」

 いわゆる「一石二鳥」のイメージですね。

 例えば仮に、「はらへったので吉野家で牛丼でも食べるかツユダクの!」という手段があった場合、

 「空腹を満たす」
 「お金を節約」

という2つの目的が同時に達成できます。まさに一石二鳥!

 一石二鳥型のアイデアは美しいですね。むろん一石三鳥でも四鳥でもいくらでも同時達成して構いません。美しいだけになかなかそんなアイデアにはお目にかかれませんけどね!
 

まとめ


 このように、「アイデア」というものを、目的と手段のカタチに分解し、それがどんなカタチになるかそのパターンを把握するようにしましょう。アイデアを明確化したり、整理したり、有用性を自覚したり、などがやりやすくなっていくと思います。

 アイデアとは、目的+手段だけど、そのかたちは一定ではない。ということが、今回のポイントです。今回はシンプルな例のみの話でしたが、「タコ足」タイプと「一石二鳥」タイプが融合したような複雑なパターンを描くアイデアツリーというのも存在しえますね!


 さて、今日のお話しはどうでしたでしょーか。なお次回は、目的が先か、手段が先か、それが問題だ・・・。というようなことを書こうかな!と思ってます。それではみなさん、まったねー!