2012年11月22日木曜日

第11回 アイデアはタコ足なのよね~アイデアの正体とは(3)

 うっほほ。かいぽんです。
すこし更新の間があきました。みなさまお元気でしょうか。今回は、アイデアの正体シリーズ第3回になります。アイデアのカタチのバリエーションについてお話ししようとおもいますー。
これまでのINDEX
その1 アイデアの正体とは(1)
その2 良いアイデア、悪いアイデアの見分け方~アイデアの正体とは(2)
今回→ 第3回 アイデアはタコ足なのよね~アイデアの正体とは(3)


 さてお約束の毎回のおさらいですが、アイデアとは


アイデア = 目的 + 手段


 であります。重要だから何度でも書きます。
このように、アイデアを目的と手段に分割したものとして考えることにより、アイデアを評価したり発展させたりなどがロジカルかつ手軽に行えて超便利だよ!というのがぼくの推奨しているメソッドになります(*^▽^*)

 さて、それを図に書いたものが、前回からご紹介しています、下図になります。

アイデアツリー基本図

アイデアツリーのバリエーション


 勘の良い方はもうお気付きでしょうが、この目的と手段は、必ずしも一対一で対応するわけではありません。

 あるひとつの目的を達成するために、複数の手段を組み合わせるなどといったことはよくありますよね。こんなかんじで。

アイデアツリー基本図 「タコ足」

 手段が「タコ足」のように目的にくっついているイメージですね。

 例えば仮に、「ソニーがアップルを叩き潰しかつての輝きを取り戻す!」という目的がある場合、その手段として

 「素晴らしいPlayStationウォークマンフォンを開発する」
 「素晴らしいPlayStationVAIOブラビアを開発する」
 「それらをシームレスに統合したネットサービスを開発する」

といった複数の手段を実行しなければなりません(架空の例ですよ、あくまでも!)

 そういったケースの場合、目的に対して上図のよう複数手段がどんどんぶら下がる形になります。


 さて、タコ足とは逆に、ひとつの手段で複数の目的を達成できる、といったケースもあり得ます。

アイデアツリー基本図 「一石二鳥」

 いわゆる「一石二鳥」のイメージですね。

 例えば仮に、「はらへったので吉野家で牛丼でも食べるかツユダクの!」という手段があった場合、

 「空腹を満たす」
 「お金を節約」

という2つの目的が同時に達成できます。まさに一石二鳥!

 一石二鳥型のアイデアは美しいですね。むろん一石三鳥でも四鳥でもいくらでも同時達成して構いません。美しいだけになかなかそんなアイデアにはお目にかかれませんけどね!
 

まとめ


 このように、「アイデア」というものを、目的と手段のカタチに分解し、それがどんなカタチになるかそのパターンを把握するようにしましょう。アイデアを明確化したり、整理したり、有用性を自覚したり、などがやりやすくなっていくと思います。

 アイデアとは、目的+手段だけど、そのかたちは一定ではない。ということが、今回のポイントです。今回はシンプルな例のみの話でしたが、「タコ足」タイプと「一石二鳥」タイプが融合したような複雑なパターンを描くアイデアツリーというのも存在しえますね!


 さて、今日のお話しはどうでしたでしょーか。なお次回は、目的が先か、手段が先か、それが問題だ・・・。というようなことを書こうかな!と思ってます。それではみなさん、まったねー!

2012年11月14日水曜日

第7回 初心者の気持ちになれ!かんたんテクニック


 「わたしがかいぽん大佐である。本日は諸君らに、アクションゲーム制作において開発者本人が初心者プレイを簡易的に再現する、そんなサバイバルテクニックを伝授する。口を開く前と後にサーをつけろ!」


  「サー、イエス、サー!」


 「そのまえにだ。いわゆる初心者には2種類のタイプが存在する。わかるか?誰か言ってみろ!」


  「サー!そのゲームにおける初心者Aと、テレビゲーム自体をあまりさわったことがない初心者Bの、2通りであります。サー!」


 「・・・・、よろしい、気に入った。うちへ来てとびだせどうぶつの森をダウンロードしていいぞ。
  
  さて、一般的にいって、ゲームプレイヤーがアクションゲームにおいて、なにかしらの操作行動をとるとき、そのプロセスは3段階に細分化できる。知っているな。言ってみろ、腹から声を出せ!」


  「サー!まずゲーム画面からゲーム状況を把握する、次になにをするか脳みそで判断する、そして判断どおりにコントローラを操作する、の3段階であります。サー!」


 「・・・・、よくできた糞袋だ!見どころがある。うちへ来てパズドラの超級ダンジョンをクリアしていいぞ。

  いいかよく聞け、初心者にミスをさせるのは簡単だ。すべての行動がのろいからな!ゲーム状況の把握から判断までの2段階にまず1.5秒はかかる。最低でも1.5秒かかると思え。そして初心者は判断どおりの操作もできるとは限らない。間違える。それどころかもともとの判断からして間違ってることが多い!わかったか返事をしろ!」


  「サー、イエス、サー!」


 「タマが自機に向かってきて動かないやつはズブの初心者Bだ!逃げるやつはよく訓練された初心者Aだ!ほんとゲーム序盤は地獄だぜ、フゥーハハハー!」


  「サー、フゥーハハハー、サー!」


 ・・・。

 こんにちは、かいぽんです。この調子で文章続けるのはやっぱり大変なので、ふだんの文体に戻します(^_^;)
 今回は、難易度調整に関わるお話しです。ゲーム序盤の難易度を初心者向けに簡単にしておくための、ぼくが普段行なっているテストプレイ上のちょっとした実戦テクニックを紹介したいとおもいます。特にアクション系ゲームの制作を対象としたものとなります。

 まずは、その必要性の前説からどうぞ。


難易度調整の実態


 アクションゲームの制作中には、開発者は死ぬほどテストプレイを行います。それこそ同じ面を100回とか1000回とか遊びます。当然ですが、しぜんプレイの腕が熟練していきます。そうなると、いまプレイしてるステージの難易度がいったい難しいのか簡単なのかだんだんとわからなくなり、ゲシュタルト崩壊して感覚が麻痺してくるようになります。(そしてたいていはゲームが難しすぎる状態になっていく傾向にあります)

 これが高次ステージなら多少難しくなってもまあ許容範囲なのですが、ゲーム序盤の場合には問題です。序盤が難しすぎるとなると(開発者本人たちは簡単にしたと思っていてもね!)、初心者はそこでつまづきます。こうなると困ります。

 ゲームを作りこむほど同時に難易度も高くなってしまうという自然現象を防止するために、ゲーム序盤を制作期間の一番最後になってから作る!という手法も存在しているぐらいです。とはいえ、しかしふつうはいろいろな理由で、ゲームは序盤から作り始めまることが多いでしょう。

 で、通常はモニターテストなどを繰り返し、難易度を適切に調整していくわけですが、モニターテストもそう頻繁に行えるわけではありません。コストがかかるからね!
 あるいはあまりゲーム慣れしていない社内の事務員の女性などにテストプレイしてもらうとか、家に持ち帰って嫁に遊んでもらう(いわゆる「嫁テスト」)だとかの方法もあるのですが、そういった”身の回りの初心者”もいずれは枯渇していくので、モニターテスト同様ここぞというときにしか使えません。

 そういった数少ないモニターテストのチャンスでバチッと適正に難易度を調整することが、最終的には開発費のコストダウンとゲームの品質向上につながります。そのためにはできるだけモニターテストの前段階で、ある程度目的の難易度に近い状態となっているように(つまり適正な低難易度状態を)キープしておくことが重要となってきます。

 いやあ前説が長かったですね。スミマセン。ここまで読んでくれてありがとうございます。いよいよここからが本編です。


初心者のへっぽこプレイを模倣する


 さてそういうわけで、ぼくの場合はゲーム序盤がいつのまにか難しくなりすぎていないか、定期的にチェックするようにしています。しかし自分自身はすでに熟練プレイヤーになっているので、さてどうするか。
 そのときに行なうのが、ハンディキャッププレイです。己のプレイに制限をつけることで、初心者の判断速度や操作ミスを模倣する、という方法を試しています。つまり初心者のフリをするわけですね。その方法はいくつもあるのですが(あるいはゲームに合わせてその都度適当に編み出すこともあるのですが)、そのうちの代表的な、アラ不思議いつでも誰でも初心者気分を味わえる、そんなステキな技を紹介します。

 なお参考までに、仮にあなたがスーパーマリオブラザーズの1−1をテストプレイする、というような状況を想像しつつ読んでいただくと、よりイメージしやすいかと思います。(マリオがお嫌いなら、お好きなアクションゲームを想定していただいて構いません)


1.逆さプレイ
 コントローラを逆さまにもってプレイします。初心者の判断速度の遅さと操作ミスを再現しやすいです。

2.クロスハンドプレイ
 両手をクロスさせて、左右逆の手でプレイします。コントローラは机などに置きます。判断速度の遅さを少しだけ模倣できます。操作ミスもたまにでます。プレイしながら通常持ちとクロスプレイを交互に入れ替えるという派生技もあります。

3.片手プレイ
 片手だけでプレイします。両手を協調させて同時操作することができない(レバー+ボタンの組み合わせ操作のタイミングがズレる)という初心者にありがちな現象を強制的に起こします。なお派生技として、右手の親指で十字キーを担当、小指でボタンを押す、みたいなバリエーションもあります。まあ最近のスマホゲームだと片手プレイが基本なんで使えませんけどね!

4.ガチャガチャプレイ
 何秒かに一回、定期的に十字キーやボタンをめちゃくちゃにガチャガチャっと押します。なにをするかわからない初心者特有の謎判断や謎操作などの再現です。

5.足プレイ
 コントローラを床に置いて、足でプレイします。ちょっとお行儀がわるい。なおこれはぼくの性癖を表してるわけではないので念のため。あと当然ですがダンスダンスレボリューションには向きませんので念のため。

6.手首プレイ
 コントローラを机に置き、手首だけをつかって操作します。繊細な操作がきかないのと、ボタンがうまく押せない状況をシミュレートできます。実践例としては、キャメルトライの制作中、パドルを手首だけで操作して実際に試してました。

7.まばたきプレイ
 ゆっくりまばたきしながらプレイします。まばたきの頻度や目を閉じてる間隔は適宜に。画面状況を把握するのに時間がかかる初心者特有の状態を擬似的に再現します。まさに「目をつぶってでもクリアできる」という状況を実践するわけです。

8.飲酒プレイ
 職場ではあまりおすすめしません。

9.手放しプレイ
 何秒かに一回、定期的にコントローラから手を放します。どうしていいかわからなくてぼーっと立ち尽くす初心者の状況を再現します。

10.複合プレイ
 上記のいくつかを同時にあるいは切り替えつつ複合的におこないます。ただしある程度慣れないと実施そのものがむずかしいです。


 これらのハンディキャッププレイでは、初心者特有の状況判断の遅さや操作の拙さをある程度再現できます。そしてその状態でもなんとかクリアできるかどうか、などを自己判定します。
 ただし、どのぐらいハンディをつければ適切か?という加減は、やはりある程度の経験と勘が必要となります。その経験と勘は、モニターテストで実際の初心者のプレイ(と手元)をたくさん見ることで培われます。
 なおぼくは物理量の目安としては、初心者が状況判断にかかる時間はおおむね1.5秒ぐらい、ということを念頭においてハンディプレイを加減しています。参考までに。

 

まとめ


 むーぅ、これはいったい本気なのかネタなのかわからん!という感想をもたれた方もいるかもと思いますが、冗談ではありません、アホに見えるかもしれませんがいたって真面目です。すくなくともぼくはこれ本気で実践しています!
 まあ実際にどれだけ効果があるかは、正直いってなんともだったりもしますが(弱気)。ですがハンディキャッププレイを実施することで、初心者のフレッシュな気持ちに近づけることは近づけます。これ重要かな、と。

 以上、よそでは聞けないひみつの実戦テクニック紹介でした。どでしたでしょうか。
それじゃあ、まったね〜!

2012年11月12日月曜日

第10回 良いアイデア、悪いアイデアの見分け方〜アイデアの正体とは(2)

 こんちゃーす!かいぽんだよ。

 今回は、以前投稿したエントリ「アイデアの正体とは」の続編となっております。なお、このシリーズは今回も含めてあと3回ぐらい続くっぽいよ(たぶん)。長編だなー、たいへんそう・・・。

前回のおさらい


 前回は、 

アイデア = 目的 + 手段

という話をしたのでした。これを図で表すと、このようになります。

アイデアツリーの基本形
アイデアツリーの基本形


 この図はとってもシンプルですが、今後も何度か出てくる基本形なので、ぜひ覚えておいてくださいね!



アイデアの良し悪し


 あるアイデアがあって、そのアイデアが良いか悪いかなんて、ぶっちゃけ見りゃあすぐわかるだろ・・・まあそのとおりなんですが、良いものにせよ悪いものにせよ、次にその評価を人に伝えなければならないことがほとんどです。
 そのときに、なぜそのアイデアが優れているか(あるいは見所がないか)を、理路整然と説明できねばなりません。判断はフィーリングで行なったとしても、説明はロジックでないと、説得力が出ないのです。

 そこで、手順立ったアイデア評価手法が有用になってきます。発想はゲームデザイナーにとって重要ですが、アイデアを的確に評価するちからはもっと重要です。


アイデアの形式になっているか判定する


 その”アイデア”が、目的と手段に分割されているかどうか判定します。どちらかあるいは両方に欠けてるようなら、可能な範囲で補足するなりして、とにかく目的+手段の形に整える必要があります。
 もしそれができないなら、そいつはアイデアの体をなしてませんから、評価以前の問題です。その”思いつき”は、一旦心の引き出しにしまっておくか、ゴミ箱にぴゅーです。


 前回はコロンブスの卵を題材にしましたが、今回はエジソンの電球が題材です。白熱電球を作るぞ!というエジソンのアイデアは、次のような目的と手段で構成されています。

エジソンの白熱電球のツリー
エジソンの白熱電球


 ちなみに白熱電球を発明したのはじつはエジソンじゃなくて、エジソンは白熱電球を長寿命に改良して実用化した人なんだって。へー。


アイデアの評価方法


 ちゃんと目的+手段というアイデア形式になっていたら、そこでやっと評価が可能となります。その評価は次の2段階で行えます。

 第1関門:アイデアとして論理的に成立しているかどうか?
 第2関門:そのアイデアがどのぐらい目新しいか?

 本当はアイデアの現実的な実現性とかコスト対効果だとか市場性だとかも評価基準になってくるとは思いますが、そこまで踏み込んだ判断は個別案件となっていくので、ここではその前段階として、そのアイデアがどの程度斬新か?(見込みがあるか?)ってところまでの評価手法の説明にとどめまーす。


1.アイデアとして論理的に成立してるかどうか判定する


 目的と手段の組み合わせが、ちゃんと整合性をもって成り立っているかどうか。これをチェックするフェーズです。
 この判定は簡単で、目的+手段の流れを逆さまにすればチェックできます。わお!

逆さまにしてチェックする


 その手段(過程)で目的(結果)が達成できる、という因果関係が成立していれば第1関門はパスです。
 もしここで論理矛盾を起こすなら、これもまたアイデアとしては成立しませんので残念ながらゴミ箱にぴゅーです。


2.そのアイデアがどのぐらい目新しいか評価する


 畳とアイデアは新しいほうが良い!「目新しい=良いアイデアに違いない」という基本原理に従った判定を行いますよ!まあほんとは一概にはそういえないかもですが、こまかいことは言いっこなし!

 ということで、そのアイデアの新規性を評価するにはどうするか。

 それにはアイデアを構成する目的と手段の両者について、それぞれ陳腐(ありがち)なのか、斬新(目新しい)なのかを見ていけばよろしいです。
 その組み合わせは以下の4つのケースに大別されます。(陳腐さや斬新さにはアナログな段階があると思いますが、話を簡単にするためにここではデジタルで考えます)

 A ありがちな目的 + ありがちな手段
 B ありがちな目的 + 斬新な手段
 C 斬新な目的 + ありがちな手段
 D 斬新な目的 + 斬新な手段

 以下にそれぞれのケースの具体例や見込み度を解説します。

A ありがちな目的 + ありがちな手段
 普通です。”シューター向けに弾幕シューを作る”みたいなごく一般的なタイプのアイデアです。悪くはないですが良くもない。新規性はないかなー。というかんじです。現状の市場規模以上のヒットはない、そんなタイプです。

B ありがちな目的 + 斬新な手段
 見込みがあります。ちょっと新しい。エジソンの白熱電球はこのタイプのアイデアです。(当時すでにオイルランプやガス灯は存在していたが、電気で明るくするところに新規性があった)
 市場シェアを奪ったり、市場自体を押し広げるようなヒット商品はこのタイプのアイデアが多いです。新しさと手堅さのバランスがとれてるタイプといえるでしょう。

C 斬新な目的 + ありがちな手段
 やや見込みがあります。いわゆる任天堂がいうところの”枯れた技術の水平思考”がこのタイプです。このタイプのアイデアは、ハマれば新しい市場を生み出し、爆発的大ヒットする可能性もあります。ただしコケるときは盛大にコケます。目的の斬新さに依存するでしょう。

D 斬新な目的 + 斬新な手段
 注意が必要です。一見新しいことづくめで良いような気がしますが、ちょww斬新すぐるwwwという結果になりがちです。たとえば3Dテレビとかですね・・・(合掌
 ただ、ウォークマンなどのように、人類の歴史を変えるようなヒットになる可能性も秘めてはいます。なので、このタイプのアイデアには慎重に取り組む必要があります。
 過ぎたるは及ばざるが如し。なにごともやりすぎないことです。


まとめ


 アイデアは、それが論理的に成立しているか、またどのA〜Dのどのタイプの目新しさをもつか、を評価するととたんに理解しやすくなるかと思います。新しさを判定するにあたって、目的と手段の新しさを個別に判定する、というのがぼくのおすすめするメソッドです。

 大量のアイデアをすべてこのように評価するのは大変なので、もちろんフィーリングでふるいにかけて結構です。そして目星をつけたアイデアについては、このように分解して分析評価することで、なぜそのアイデアなのか?という説明が可能な、強固な理論基盤を構築しやすくなるでしょう。

 いままでは、「なんとなく」で評価していたアイデアも、このような目線で見てみるとわかりやすくなるんじゃないかなーと思ってます。どうでしたでしょうか。

次回予告!
 アイデアってさ、目的とか手段とかひとつずつってわけじゃないよな?という疑問が湧いてくる方もいらっしゃったかと思います。次回はそのお話しをするお!アディオス!

2012年11月7日水曜日

第6回 スコアと勝敗と体験と実績と共有と

 こにゃにゃちは〜。たりらりら~ん。かいぽんです。

 今回は、ビデオゲームデザインの過去、現在、そして未来のお話しをしようと思います。いきなりなんだか壮大ですね〜。でも気楽なかるーいお話し?なのでご心配なく!

 ちょっと古い記事ですが、現代のゲーム:「シンプルな勝負」から「達成」へと銘打たれたこちらのアーカイブ記事をご覧ください。2010年の記事かと思いますが、よくまとまっています。

 要約すれば、黎明期のビデオゲームは、クリアできるかどうかやスコアや勝ち負けがゲームの目的だった。そして現代のゲームは、実績の達成が目的となっている。でもさあ、やがて現実までゲーム化されて生活や社会や学校でもこまごまとした実績の達成で駆動されるようになっちゃったらどうなんだろう?心配だね!というようなことが書いてあります。

 おっとっと、ゲームが現実社会に侵食する、いわゆるゲーミフィケーションについては今回のお話しでは取り扱いません。パスします。それはまたいずれ。
 というか心配しすぎですね!だいじょうぶ、ゲームと現実は区別しましょうよ!なんちて。

 さて。話を戻して、まあそういったくくりで、ゲームデザインの発展の歴史をザクっと大雑把にひもといていってみましょう。れっつらゴー!


大昔、スコアと勝敗の時代


 かつてのゲームは、まず、

 ・スコアやタイムを競うもの

 ・クリアできるかどうか試されるもの
 (アドベンチャーゲームとかRPGとか、鬼難易度の『カトちゃんケンちゃん』とかな!)

 ・対戦ゲームなど勝ち負けを争うもの

 だいたいこんなでした。もちろんそれらがミックスされた複合形態も存在し、時代を経るにつれ徐々にゲームデザインは複雑になっていきます。しかし基本的には1プレイを長く続けられたほうが偉い!って価値観でしたね。それが面白さや楽しみだったのです。


ちょっと前、体験の時代


 その後、コンピューターの表現力が向上してくると、今度は「体験する」ゲームデザインが台頭してきました。『MYST』や『ICO』といった世界体験型のゲームがその代表格、といえばわかりやすいでしょうか。むろん黎明期のアドベンチャーゲームやRPG、『アウターワールド』などのアクションゲームでも「体験」スタイルの萌芽がみられますが、本格的に楽しめるようになったのは表現力が格段に豊かになり、「臨場感」を演出できるようになってからでしょうか。

 「体験」はアドベンチャーゲームだけとはかぎらず、FPSなどにもリアリティ追求による臨場感向上により体験型要素が存分に散りばめられています。(とはいっても結局撃ち合うゲームには変わりはありませんけど!)
 どれだけ”映画のような”、あるいは”現実のような”、リアルな体験ができるかが、ゲームの重要な要素としてゲームデザインにも取り入れられてきました。

 そして臨場感の演出向上がある閾値を越えたあたりで(つまり、まあ素人目にそれ以上画面が綺麗になってもあんまりよーわからん!ってなったあたりで)、こんどは「実績(アチーブメント)」が登場します。


現代、実績の時代


 実績、アチーブメント、トロフィー、表現は様々ですが、ここでは実績と統一しておきましょう。じつはこのすこし前の時代から、ゲームには「やりこみ要素」という(中古対策の)フィーチャー群があり、そしてそのやりこみ度を評価する機能が存在していました。「達成度◯◯%」みたいな指標ですね。

 これらを大きく拡張し、ゲームの中でのちいさなミッション、ストーリー進行度、様々なプレイの蓄積、隠し要素の踏破、もちろんやりこみ要素も、などなどを網羅的に記録し評価する、という「実績」システムがプラットフォーム機能として推奨されるようになりました。

 いままではユーザー個人のこだわりプレイでしかなかった「ナイフだけでクリア」などの変態プレイでも「実績」として評価される、ほんとに大きなお世話な素晴らしい機能です!これでナイフでも戦えるよ! 母さん、ぼくのあの、スナイパーウルフをリモコンミサイルで倒したあの実績も解除されるようになったかな??

 プレイヤーのゲームプレイを細かく評価し、褒めて、ごほうびをあげる、という実績システム。可処分時間の少ない現代人の心を折れさせないでゲームに釘付けにするためにはもはや必須で、そのためのゲームデザインも意識的に行わなければならないようになりました。

 スコアも、勝敗も、体験すらも、すべて実績達成として記録するのが、今風のゲームデザインなのです。


未来、そして共有へ


 そしてこれから。実績達成の次はどこへ向かうのでしょうか。

 もちろん、これからは「共有」の時代でしょうソーシャルソーシャル!(葛城ミサト風)といえば一言で終わってしまう感じもするのですが、もうちょっと未来予測らしく書いてみます。

 いま、オンラインゲームやソーシャルゲームでは部分的にはゲーム内アイテムなどのある種の共有化が行われているかと思います。ほかにも『モンスターハンター』などでは、ある種「体験の共有化」といっていい現象が見られます。

 今後将来的には、すべてのゲームがオンライン化していき、他のユーザーとつながることが当たり前となっていくでしょう。というかもうなってますよね。
 そしてそのときは、かつてのスコアや勝敗や体験が実績に取り込まれたように、スコアや勝敗や体験や、そして実績までもがより強固に共有化される、より積極的にゲームデザインとして取り込まれていく、そんな時代になっていくんじゃないかなと個人的には予想しています。

 いまでもすでに「実績」や「トロフィー」はシステム画面経由でユーザー間では共有されていると言えば言えますが、これがもっと進んだ形、たとえば複数プレイヤーがみんなで共同で実績を達成していくゲームだとか、共同スコアだとか、そういったゲームデザインがより発展していくのではないでしょうか。(すでに似たようなものがありそうですよね!勉強不足でスミマセン)

 そして理論上でいえば、こんどはその逆に、そういった共有具合をスコアとして取り入れて競ったり、共有具合で勝ち負けを決めたり、共有をひろげていくこと自体をみんなで体験する、などなど、過去のゲームデザイン要素に還元したり、なんだか循環していくようなゲームデザインが行なわれるようになる可能性があります。わお、ループしている!時代はめぐる!ウロボロスだよ、おっかさん!

 なんだかよくわからない話になってきましたね。ついてこれてますか?

 ひとことでまとめれば、これからは

  「ゲーム体験の共有」

の時代に進んでいくのではないかというのが、わたくしの青年の主張であります。


まとめ


 ゲームデザインの壮大かつ超大雑把な進化の歴史をみてきました。スコア、勝敗、それから体験へ。そしてそれらをとりこんだ実績の時代へ。そして今後は「共有」が、またそれらすべてを取り込み融合し、ゲームデザインは深く広く複雑になっていく・・・ 
 そして「ゲーム体験の共有」とは、メタゲームデザインと呼ばれる領域にまで及ぶことが考えられます。なんだか頭がくらくらしてきますね。自分的にはPSVitaの『near』がその初歩的な形のひとつだと思ってデザインしたのですが、どうでしょうか。

 「ゲームはみんなでやればもっと面白い!」を具現化していく、そんな未来に向かって、これからもゲームデザインの進化は続いていく!ゲームの進化は止まらない!のではないでしょうか。なんだか希望にあふれてますね!ちょっと妄想気味ですが、自分ではわりと真面目にそう信じてます。

 今回のお話しはいかがでしたか。ご清聴ありがとうございました!ぺこり。

2012年11月3日土曜日

第5回 黒ひげ危機一発、ヒットの理由?!

 やっほー。かいぽんです。

 しばらくゲームとはあんまり絡まないゼネラルな話が続きました。ちょっと反省して、今回はちゃんとゲームデザイン関係のお話しです。といっても教材は玩具ですが。ではいってみましょー!

 みなさんご存知の『黒ひげ危機一発』という玩具がありますね。このゲームルールの変遷が今回のテーマです。Wikipediaによれば、このゲームは1975年に発売され、いまも販売している息のなが〜いロングセラー商品とのことです。すごいですね。

 でもそんな黒ひげさんも、発売当初はいまいち人気がなかったそうです。
 黒ひげさんは発売当初、剣を刺して「黒ひげを飛び出させた人が勝ち!」というルールでした。しかしその後、「黒ひげを飛び出させた人が負け!」というルールになってから人気に火がつきヒット商品になったとか。

 つまり、ルールを入れ替えることで遊びが面白くなって、それがヒットにつながったんですね!(ほかにもテレビ番組で使われるなどで認知度があがった、などの背景もあるようですが)

 さて、ここで疑問がわきます。この商品の命運を変えたルール変更、「飛び出させたら勝ち!」を、「飛び出させたら負け!」に入れ替えたことによって、なぜゲームが面白く感じるようになったのでしょう??? ほんのちょっとの変更にみえますが、ここにいかなるメカニズムが働いたのでしょうか???

 ちょっと改行しておきますので、そのあいだに少し考えてみてください。
答えはこのあとすぐ!もうまもなく!













黒ひげさんに何が起こったのか?


 まず、発売当初のルール「飛び出させたら勝ち!」のゲームプレイを考えてみます。

 ルール1「飛び出させたら勝ち」 ゲームスタート!

刺す→はずれ!
 刺す→失敗!ハズレだ!
  グサッ→また失敗!
   グサッ→ミス!失敗だ!なにをしているッ!
     刺す→またもやハズレ!もう君には頼まん!
      刺す→バ〜ッド!また外したぞ!ニック、国へ帰れ!
       グサッ→成功!すぽ〜ん! 君の勝利だ!!!

 平均的にいって、上記のような失敗→失敗→失敗→成功、というゲームプレイになるかと思います。では次に、変更後のルール「飛び出させたら負け!」のゲームプレイをみてみましょう。


 ルール2「飛び出させたら負け」 ゲームスタート!

刺す→成功!大丈夫だ。
 刺す→グッド。セーフだぞ。
  グサッ→またまた成功!いいぞ。
   グサッ→OK!セーフだ。
     刺す→成功!ナイス刺し込み!その調子だ!
      刺す→成功!フ〜ゥ、やるじゃない!
       グサッ→失敗!ぽぽぽぽ~ん! 黒ひげは星になった!You lose!

 平均的には、上記のような成功→成功→成功→失敗、という流れのゲームプレイになりますね。

 プレイヤーには成功体験を積ますべし、という昨今のゲーム原理からいえば、失敗続きのルール1よりも、成功ケースが多いルール2のほうが優れてるのは明白ですが、これはじっさい正確にはどういうことなのか、もう少し詳しく見てみましょう。


難易度曲線で比較する


 「黒ひげ危機一発」は、ゲームスタートから差しこみ穴に剣を差し込んでいくことで、差しこめる穴の数がどんどん減っていき、それに従いだんだんと当たり確率が上がっていきます。つまり、最初は当たりにくく、ゲームが進むにつれ当たりやすくなる、という単純な数学的原理が働いています。

 これを難易度の変化として、ルール1の「飛び出させたら勝ち」という場合の難易度曲線でプロットしてみましょう。



 このようにゲーム序盤は当たりが出にくく難易度が高い、ゲームの進展に従い当たりが出やすくなって難易度が低下していく様子が分かります。


 つぎに、ルール2「飛び出させたら負け」の場合の難易度曲線はこうなります。


 ゲーム序盤はセーフの確率が高いため難易度が低く、ゲームが進むにつれ負けを引く確率が上がり難しくなっていきます。


 これをふまえて、件のルール変更でどうなったのか、並べて見てみましょう。


 なんということでしょう!
 ルール1「飛び出させたら勝ち」からルール2「飛び出させたら負け」にルールを反転させたことで、難易度曲線もみごとに反転してしまいました!まさに劇的!

 「黒ひげ危機一発」のルール変更の意味は、とどのつまり、

難易度カーブが適正になるよう修正した

ことにほかならない様子が見てとれます。


まとめ


 「黒ひげ危機一発」のゲームルール変更は、じつは難易度調整だったのです。

 ゲームを制作するうえで、難易度曲線を調整することは多々あると思いますが、ルールを変更することで難易度を調整するというすさまじいアクロバットになるなんてすごいですね!こういうこともあるんですね〜。

 ゲームのルールを変更したり難易度を調整したりする場合は、相互にゲームプレイに影響を及ぼす可能性を十分に承知しておくことが大事だな〜。と、かいぽんはそう思いました。

 まあそのほかにも、難易度上昇にしたがいスリルも上昇するとか、ひとりだけの勝者が出るぐらいだったらみんな横並びで負けをひとりだけ作るほうがいいという、どすぐろい足の引っ張り合い日本的ムラ社会の構造的精神性うんぬんが日本市場にマッチした・・・、というような推論もなりたちますよね。いろいろ考えさせられますね(^▽^)


 さて今回のお話しはいかがでしたでしょうか。ちょっとした玩具のゲームでも、その面白さの源泉を探ってみることでビデオゲームづくりの参考になったりすることがあるかと思います。たのしいですね!

 それではまた。ばいちゃ〜。



2012年11月1日木曜日

第4回 ブレインストーミングの誤謬


 「おーい、磯野ー!ブレストしよーぜ!」


 ブレスト。ブレインストーミングの略称です。みなさんは「ブレスト」と聞いて、どんな会議を想像するでしょうか。

 こんにちは。かいぽんです。今日はこの不思議なミーティング、「ブレインストーミング」について、すこし思ってることを書きます。それってもしかしてブレスト?(芦原英幸風)だとか、ブレインストーミングの本質とはなんなのら、とかの、そんな話です。レッツ夜露死苦ゥ!


それってほんとにブレスト?


 日本の会社で、「ブレスト(ブレインストーミング)」といえば、次の2つの形態がほとんどを占めると思われます。

  1. ざっくばらんに話し合う会
  2. ブレインストーミング経典に則ったアイデア会議

 いえ、どちらも別に悪いわけではないですよ。大いにやるべきです。
 上の1番は「ブレストなんだから都合の悪いことや関係ないことでもじゃんじゃんざっくばらんに発言しようや」という、ある種免罪符としてブレストという言葉をうまく使ったもので、じつは本来の意味のブレインストーミングじゃないですよね。まあでもざっくばらんに話し合うことはイイ事ですが。

 そして2番は、たいていの場合、ブレインストーミングのルールを仕切る”ブレスト奉行”がいて、出た意見は否定するべからず、とか、全員が順番に発言すべし、とか、ポストイットにアイデアを書くべし、とかいろいろとお世話を焼く感じじゃないでしょうか。どうにも緊張しますよね。

 こんな会議でほんとにいいアイデア出るの?と、みなさん疑問に思ったことが一度や二度じゃないのではないかと思います。


ブレストの本質とは


 書店で売られてるようなブレインストーミングの教本には、さまざなまブレインストーミング手法やルールがこれでもか!って具合に書いてあると思います。でもルール手順がいっぱいで、みなさんも「いってることは分かるけど、いまいちめんどうだなあ」と思っているのではないでしょうか。

 ぼくが思うに、ブレスト教本とかだとルールの教示に一生懸命なあまり、初歩的な基本があんまり書いてない気がするんですよね。

 それらのせいで、ブレインストーミングに対して多くの人が正しいイメージを持ててないんじゃないかと心配しています。


 ブレインストーミングとは、とどのつまりなにかといえば

ネタの評価はあとまわしにして、まずネタの数を出す

 っつーことが目的なんです。

 すなわち、

  ブレストの場ではネタをどんどん出す
          
  ブレストが終わってから(終わってからですよ!)
  一旦持ち帰ってネタの善し悪しを選別する

ってのがブレインストーミングの手順の基本になるんです。

 要は、ネタ出し作業と選り分け作業を完全に分離することで、ネタ出しそのものに集中して短時間で大量のネタを集められる。それがブレインストーミングなんですね。つまり完全分業による効率化。

 この基本のキを理解すれば、ブレスト教本にあるルールなんかも、その意味がより理解できるんではないかと思います。
 逆にこの理解がなく、ルールありきの会議では、ブレストもなかなか効果が出ないのではないでしょうか。


まとめ


 ブレインストーミングとは、とにかく大量にネタが必要だっ!だとか、たくさんネタを出せばなにか役に立つものがひとつぐらいでるだろうッ!ってときに人を集めて行なうことで威力を発揮します。
 そんで、ネタを集めるだけ集めたら、その選別は別途で然るべき人が(できれば冷静な人が)行なうべし!であります。(いったん熱を冷まさないとね!)

 こうしてみると、いわゆるなにか問題を解決するための会議(解決策まで策定する会議)、ってのは、それは本来のブレスト形式だと成立しえませんよね。ブレストとはネタ出し(オンリー)なわけですからね。
 そういった目的の会議では、”ブレスト奉行”の活躍は遠慮してもらうのが吉だと思います。いわゆるブレストのルールで行なっちゃダメです。発散するだけ。

 もっとも教本によっては、ネタ出しと、その後のネタの選別とをいっぺんにやっちゃうようなルール付けをしているものもあるようですが。それはなかなか頭の切替が難しい、達人向けのやりかたですね。あまりオススメはできないっキリッ


 さて今回のお話しはいかがでしたでしょうか。ブレストってみんな大好きだけど、あなたも(わたしも)うっかりうるさいブレスト奉行になってしまわないよう、お互いみんなで注意しましょうね!

 ちゃおー!