こんちゃーす。かいぽんです。
「ゲーム性」・・・ おそろしい言葉だ。だが、ゲームデザイナーとして、逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ・・・
前回の問題提起編と同様、ゲームデザイナーとして避けては通れない道、「ゲーム性」という言葉の定義に、完全かつ最終的な説明をつけるべく、今回もがんばります!
では早速ですが、次の例文をごらんください。この例文ですべてが説明できるかと思ってます。
「宝くじのゲーム性とは、高額賞金が当たるかドキドキしつつ待つことにあり、
そのゲーム性は、抽選により当選番号が定まることである。
総じて、宝くじのゲーム性は低いといえる。」
な、なにをいっているかわからねーだろうが、頭がどうにかなってしまわないよう解説しますね。
「ゲーム性」という用語を使う場合、その文脈によって以下の3つの意味に大別できると考えています。
- 広義のゲーム性 = fun factor
- 狭義のゲーム性 = core game play mechanics
- 面白さを表す尺度 = ゲーム度(※個人差あり)
1.広義のゲーム性
そのゲームの何がおもしろいのか。ゲームプレイでなにを楽しめるのか。というオーバービューでみたとき、そのゲームが提供する楽しさが
何か?を表すものが「広義のゲーム性」といいます。
宝くじでいえば、「くじが当たるかどうかドキドキする」「夢を買う」という楽しみがありますが、これが広義のゲーム性にあたります。
このゲーム、なにがおもしろいの?なにが楽しめるの?どういった体験ができるの?と問うたときに返ってくる答えが、広義のゲーム性なのです。
広義のゲーム性は、ほぼ客観的な要素であり、基本的には得られるユーザー体験を形容詞や動詞で表現するものになるといえます。商品性と言い換えてもよいでしょう。
2.狭義のゲーム性
ゲームルールやゲームシステム、操作性やUIなど、ゲームを構成する各要素やその噛み合いなどを表すものが、狭義のゲーム性といえます。そのゲームの楽しさを
どうやって?作り出しているか、というメカニズムを表します。
宝くじの例では、当選番号が完全にランダムで決まり、その前後賞などがある、というのが狭義のゲーム性にあたります。
このゲーム、どういうルールなの?どういう仕組みになってるの?という問いの答えが、狭義のゲーム性といえます。
狭義のゲーム性も、ほぼ主観の入る余地のない客観的な要素であり、具体的なゲーム仕様などを名詞や数値などで表現することができます。
3.面白さを表す尺度(ゲーム度)としてのゲーム性
ゲーム全体で見て(広義のゲーム性と狭義のゲーム性とを鑑みて)、そのプレイヤーにとってそのゲームまたはゲーム要素が
どのぐらい?面白いかを表す尺度で、「ゲーム度」あるいは「ゲームおもしろ度」と言い換えるとわかりやすいかと思います。
前2つのゲーム性とは違って、このゲーム度は尺度です。指標です。
さらにはこの「ゲーム度」という指標には完全に個人差があります。評価者がどう見るかによって、尺度のスケールが変わってきます。他の2つの「ゲーム性」とは違って、ゲーム度はどうしても主観的なバイアスがかかってしまうのです。
宝くじの例でいいますと、買ったら待つだけ、ランダムで当たりが決まる。ゲーム的要素がなにもない(ゲームっぽさがない)、すなわちゲーム度は低い(ゲーム性は低い)と評価する人がいるとします。
そのいっぽうで、当たればリターンが大きい、ドキドキして射幸心が煽られる、これはむしろゲーム度が高い(ゲーム性が高い)、と評価する人もいます。
このように評価が180度異なってしまってしまう場合がでてきます。しかもどちらが正しいとも言いがたい。
なぜこんなことになるのか。広義のゲーム性と狭義のゲーム性のどちらにウエイトを置いて評価するかによって、結果が変化してしまうためです。そのゲームをみる立ち位置によってまさに千差万別の評価になってしまうわけですね。というか、広義のゲーム性があることによって、ゲーム度は評価者個人の主観の影響をどうしても免れません。
いずれにせよこの「ゲームの面白さを表す尺度」は主観性の高い指標であり、ここに「ゲーム性」なる言葉を使っていることが、巷のゲーム性論争を混乱させる要因のひとつになっていることは否めません。
そのために、この3番目の意味での「ゲーム性(ゲーム度)」は、ゲーム性の定義から明確に除外すべきだ、という意見もあります。ぼく自身は、現実として世間でそのように使われてるので除外しようがない、とは思ってますが。
駆け足でしたが以上が解説となります。ゲーム性という言葉で表されるものは、この3類型で全部かな、と思います。
ここでもういちど冒頭の例文をみてみましょう。
「宝くじのゲーム性とは、高額賞金が当たるかドキドキしつつ待つことにあり、
そのゲーム性は、抽選により当選番号が定まることである。
総じて、宝くじのゲーム性は低いといえる。」
今度は文脈がちゃんと読み解けましたでしょうか。宝くじファンの方は、ゲーム性は高いといえる、と読み替えてもらっても差し支えありません。
混乱の元凶は
「ゲーム性論争」はなぜ紛糾するのでしょうか。またなぜうまく表現できないのでしょうか。
- 前後の文脈を読み取れず、その時のゲーム性の持つ意味を取り違えてしまう。
- 「広義のゲーム性」と「狭義のゲーム性」の間にグレーゾーンがある。また内容がかぶってしまうことがままある。
- 「面白さを表す尺度(ゲーム度)」に個人の主観が入る。
という3大原因によって、混乱に拍車がかかってしまうといえます。
2番目の「広義のゲーム性」と「狭義のゲーム性」の内容がかぶってしまうケースとは、たとえば、「手にぴたりと吸い付くようなダイレクトかつクイックな操作感を楽しむゲーム」という狙いのゲームタイトルがあった場合、広義のゲーム性でも狭義のゲーム性でも、その両方に操作感という評価要素が出てきます。
この場合には文脈によってどちらのゲーム性における操作感なのか、ややこしいうえにあやふやになりがちです。ゲームによってはそういうことがままあります。
また、「広義のゲーム性」という文脈にはたとえば「超絶美麗CGを楽しむ」といった要素も含まれることになります。ここでおもに狭義のゲーム性に特にこだわる人々にとって、「おい、グラフィックとかゲーム性に関係無いだろ!」という誤解と混乱を生むこともしばしばです。
※なお、グラフィックはいまやゲーム性に多大な影響を与える重要な要素として認識されています。狭義のゲーム性においても、グラフィックがゲームメカニクスに及ぼす影響には多大なものがある。というのがいまや一般論になっているかと思います。
まとめ
さて、今回は「ゲーム性」の定義について、完全かつ最終的な説明をして試みよう!と大上段に構えてみたわけですが、いかがでしたでしょうか。最終的とかいいつつ、gameplayとfun factorの違いについてはあいまいなままなので、もうちょっと詰めて考える必要がありそうだということにいま気付きました。たはは。
「ゲーム性」という言葉は、前後の文脈でその意味が変わってきます。ぼく自身は、よけいなコミュニケーションロスを生まないために、なるべく「ゲーム性」という言葉を使わないよう推奨しますが、もし誰かが「ゲーム性が~」と言ってきた場合には、文脈をとらえて正しく理解することが大事だと思っています。
ただし!そのときの注意。
「おたくのいうそのゲーム性って、どういう意味でのゲーム性よ?」などと逆質問してはいけません。
ダメ!絶対!不毛な宗教論争がはじまりたいへんな時間のロスになってしまう可能性が高いです。ふんふん、と聞き流す体で適宜に解釈してあげましょう。
「ゲーム性」という言葉のもつ3つの意味を正しく解釈して使いこなせれば(なるべく口には出さずに頭の中でね!)、これはゲーム制作における羅針盤としてとても有効な処方箋になるでしょう。しかし混同して使ってしまうと、薬も毒になってしまいかねません。ここが悩ましいところ。
本ブログ読者のみなさんにおいては、ゲーム性のもつ3つの意味をよく吟味して、ゲームの分析や評価にぜひ活用していただければ、と願っています。
そしてもしこんがらがったときには、この宝くじの例を思い出してネ!そしたら大丈夫だよ。あと、そもそも宝くじってゲームなの?って疑問を持っちゃダメだよ。
コスティキャンの定義ではゲームじゃないってことになりますが?などと言っては
ダメ!絶対!世の中はすべてゲームなんだから。
・・・
今回のお話しはどうだったでしょうか。ちょっと難しかったネ。解決になったかな?
さて、このお話は、あともう一回続きます。(なんと!)
次回は、「ゲーム性は、高けりゃいいってもんでもないんだよ~。」というお話しです。お楽しみに!それではさようなら~