前回、前々回にひきつづきゲーム性のお話しですよー。
今回は、ゲーム性は高ければいいってもんじゃない。というテーマになります。
ではいってみよー!
ソニックブラストマン
古い作品だが、「ソニックブラストマン」というパンチングゲームの例をみてみよう。みなさんも、一度は街のゲームセンターでみたことがあるはずだ。
ソニックブラストマン ©TAITO CORP. |
このゲームのストーリーは明快だ。「あなたはスーパーマンとなってさまざまな災厄から町の人々を守る。それもパンチ3発で。」
広義のゲーム性(ゲーム体験)はこうだ。「パッドを殴ると、TV画面の中のターゲットが壊れていく」「スカッと殴ってストレス解消」
狭義のゲーム性(ゲームメカニクス、ゲームルール)はさらに単純だ。「パンチ3発の合計値が既定値を超えていればクリア。そうでなければゲームオーバー」「難易度は5種類から選べる」。これだけ。ほかにはなにもない。
そのゲーム性(ゲーム度)の評価はどうだろうか。ゲーム性(ゲーム度)は極めて低い。アホのように低い。むしろゲームかどうかすら微妙なレベルだw
にもかかわらず、この単純きわまりないゲーム「ソニックブラストマン」は市場で人気を博した。稀代のバカゲー?として面白さは評判になり、20年以上を経た現在でも多くのプレイヤーの記憶に残っている。(なお現代風にリニューアルされたリメイク最新作もあるよ!)
ソニックブラストマンの例でいえば、たとえば「タイミングをはかってパンチを出すと高得点」「RPG要素を加えてパンチ力が成長していく」などのゲームルールを追加することも可能だったろう。実際に制作当時にそういうアイデアもあった。だがそれらのアイデアは冗長な蛇足だ。ゆえに捨て去られた。
ソニックブラストマンは、狭義のゲーム性(ゲームメカニクス)を単純にし、ゲーム度を下げたことによって逆に面白さが研ぎ澄まされたゲームの例なのだ。(ぼくはこの端的な事実に非常に強い感銘を受けている)
ではゲーム性は単純なほうがいいのか? さにあらず。こんどは複雑なゲーム性のゲームをみてみよう。
麻雀
次に、テーブルゲームの代表格「麻雀」を例にとってみる。
狭義のゲーム性(ゲームメカニクス、ゲームルール)は複雑極まりない。使用する牌だけで34種類。ゲーム進行や得点システムなどは一見ではまったく意味不明なほど入り組んでいるうえ、専用用語など覚えることも多い。
にもかかわらず麻雀が人気ゲームとなっている背景には、広義のゲーム性(ゲーム体験)がシンプルでわかりやすい、という点にもある。すなわち「たくさん和了った(あがった)奴がえらい」「あがるかあがられるかのスリル」「点棒を多く持ってる人が勝つ」という分かりやすさがある。
麻雀のゲーム性(ゲーム度)は、高いといえる。ほぼ無限のゲーム局面に対し、プレイヤー間のかけひき、不完全情報ゲームとしてのバランスがとれており、意志決定の機会数・選択肢ともに豊富である。ひとことでいえば、非常に頭を使うゲームだ。にもかかわらず、運次第で大勝ちもできる懐の広さもある。
えっと、じゃあ、結局のところ、広義のゲーム性がシンプルならいいってこと? さにあらず。こんどは広義のゲーム性が複雑なゲームの例をみてみよう。
サッカー
「サッカー」は世界的な人気スポーツだ。スポーツではあるが、その体裁は明らかにゲームだ。
狭義のゲーム性(ゲームメカニクス、ゲームルール)は実に単純である。「ボールを相手ゴールに蹴り込めば1点」「ゴールキーパー以外は手を使ってはいけない」など、そのルールは子供でも容易に理解できるほど簡単だ。
わかりにくいといわれているオフサイド・ルールも、その意味はシンプルである。(ちなみにオフサイド・ルールが一見難しくみえるのは、オフサイド・ラインの定義がちょっと複雑だからである)
いっぽうで、サッカーにおける広義のゲーム性(ゲーム体験)の魅力をひとことで語るのはなかなかに難しい。サッカーのなにがどうおもしろいのか。「華麗なテクニックとスピード感」「クリエイティブな戦術」「予測不能でダイナミックな試合展開」などなどが挙げられるが、なんだかもやっとしている。
サッカーには引き分けもあるので、「ゴールの数で勝ち負けが決まる」という素直さもない。0-0のスコアレスドローの試合でも面白かった!という場合の魅力を、どう説明すればいいのか悩む。
サッカーのゲーム性(ゲーム度)は、高いようにみえる。めまぐるしく変化するゲーム局面。プレイヤー同士のかけひきが生み出す戦術には無限のバリエーションがあり、鍛えられたプレイヤーのフィジカルとクリエイティビティから繰り出されるゴールシーンの爽快感は格別だ。
サッカーは、プレイするものにとってはもちろん、観戦者にとっても熱狂的におもしろいスポーツであることは間違いない。しかしそのゲームメカニクス(ゲームルール)は、ソニックブラストマン並みに単純である点に留意してほしい。サッカーはあきらかに、単純なルールから複雑な局面が創発されるゲームなのである。
まとめ
以上、3つのゲームの例をみてきた。
ゲーム性が低いものも、高いものも、複雑なものも、単純なものも、それぞれに面白さがある。
必要なのは、ゲームを複雑にすることではない。かといってシンプルにするべきということでもない。
ゲームをデザインする作業においては、ゲーム性をそのゲームの目指すところにおいて、意図をもって、最適な質と量にコントロールすることが最も重要かつ必要なのである。
その意味において、ゲーム性はただ高ければいいってもんじゃないのである。というのがぼくの結論。ゲーム性をあえて落とすのもひとつの選択肢なのである。勇気をもってやろう!
さて、今回のお話しはどうだったでしょうか。今回は文体がちょっと硬かったネ。あと麻雀とサッカーの話はちょっと強引だったかもしれないけど、言わんとするところはわかってもらえたんじゃないかと思います・・・。
それではみなさんまた会いましょう。まったねー!