かつてぼくがタイトー時代に受講したある社員研修にて、つぎのような講義があった。
講師 「取引先のお客さんが応接室に来社したので、お茶出しをすることになった。
講師 「社員Aは、湯呑みを手で掴んでお茶を持っていった。
講師 「社員Bは、湯呑みをお盆に載せて運んだ。
講師 「どちらの社員も同じお茶を持っていったが、どちらのやりかたがより丁寧に見えますか?
答えは、社員B。お盆に湯呑みを載せていった方が、明らかに丁寧なおもてなしですね。
さてここで問題です。
なぜ湯呑みをお盆に載せたほうが、手づかみよりも丁寧に見えるのでしょう?
誰か説明できる人はいませんか?
受講者一同 「・・・・・(ざわっざわっ」
俺 「・・・それは、いわゆる”おぼん効果”・・・というやつですね」
受講者一同 「し・・・知っているのか、雷電!」
おぼん効果というのは、その場でひらめいた即興の造語である。そのとき命名した。
おぼん効果仮説による説明では、社員Aの行為はおぼん効果指数が低く、社員Bのケースはおぼん効果指数が高い状態だといえる。そしておぼん効果指数が高ければ、丁寧さも比例して上昇するのである!
ここで注意すべきは、そもそもお盆を持つと何故おぼん効果が増大するのか、という疑問である。これははじめの問いの変形にすぎない。すなわち問題がすり替わって循環しているだけである。しかしそれでもおぼん効果と命名するその価値はある。
お盆による丁寧さ発生メカニズムの真相解明はともかく、お盆を持つ→丁寧さがあがるという現象に「おぼん効果」と命名したことで、問題と現象そのものの関連フレームが明確になり、さらにはまったく新たな角度からのアプローチを可能とするのである。
すなわち、そこに第三の問いが生まれる。
「おぼん効果」を上昇させる要因には、ほかに何があるのか?
社員Bが女子社員ならおぼん効果は増大する。さらにはOL制服を着ていればより増大は大きい。メイドコスやバニーガール姿ならばさらなるおぼん効果の上昇が見込める。いっぽうで、くの一装束だとおぼん効果は減少するようにみえる・・・
話がだんだんズレてきた。
命名することで取扱が楽になる
湯呑みをお盆に乗せたほうが丁寧になる。このような複雑な概念・現象に、適宜に名前をつけることは、ゲーム開発現場ではとくに有用である。
・タイミングをあわせてボタンを押す行為を「目押し」
・格闘ゲームでジャンプで相手を飛び越えてガード方向の反対から攻撃判定を当てることを「めくり」
・走査線の1ラインごとにスクロールをさせる技術を「ラインスクロール」(カプコンでは「すじ流れ」と呼んでいるらしい。カプコンの用語はなぜだかへんてこ)
・CPUの計算時間が走査線回帰時間に間に合わないことを「処理落ち」(カプコンではなぜか「引きつり」と呼んでいるらしい。カプコンの用語は、おかしい)
・タイトーではレベルエディタを使ってレースゲームのコース上に看板などを置いていく作業を「田植え」とよび、そのためのレベルエディタツールを「田植機」と呼んでいた。
などなど、ゲームの仕様や現象、開発工程そのものなどにそれぞれ名前を作り出し割り当てることで、みなの共通認識として浸透しやすくなり、開発チーム内でのコミュニケーションが円滑になる。
すでに開発現場で一般化された用語はそのまま使えばいいし、手がけてるゲームに特有のものについては、勝手に分かりやすい名前をつけておこう。
まとめ
命名の重要性がどれだけ伝わったか、ぼくの稚拙な文章能力ではちょっと自信がないけど、わかっていただけたなら幸いです。さて、ここで例題タイム。
いまゲーム業界をなやましている
「おもしろいゲームが、かならずしもその面白さに比例して売れるとは限らない。(でも売れるゲームってたいていは面白い)」
という残念な現象に、名前をつけるとしたら、どうする?
ぼくのひとまずの回答は、「ゲームのハリウッド化」現象ですね。もっといい名前を思いついたひとは↓のツイッターボタンを押してツイートしてみてね!
今回の話はどうだったかな。それではみなさんアスタルエゴ~
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