しばらくゲームとはあんまり絡まないゼネラルな話が続きました。ちょっと反省して、今回はちゃんとゲームデザイン関係のお話しです。といっても教材は玩具ですが。ではいってみましょー!
みなさんご存知の『黒ひげ危機一発』という玩具がありますね。このゲームルールの変遷が今回のテーマです。Wikipediaによれば、このゲームは1975年に発売され、いまも販売している息のなが〜いロングセラー商品とのことです。すごいですね。
でもそんな黒ひげさんも、発売当初はいまいち人気がなかったそうです。
黒ひげさんは発売当初、剣を刺して「黒ひげを飛び出させた人が勝ち!」というルールでした。しかしその後、「黒ひげを飛び出させた人が負け!」というルールになってから人気に火がつきヒット商品になったとか。
つまり、ルールを入れ替えることで遊びが面白くなって、それがヒットにつながったんですね!(ほかにもテレビ番組で使われるなどで認知度があがった、などの背景もあるようですが)
さて、ここで疑問がわきます。この商品の命運を変えたルール変更、「飛び出させたら勝ち!」を、「飛び出させたら負け!」に入れ替えたことによって、なぜゲームが面白く感じるようになったのでしょう??? ほんのちょっとの変更にみえますが、ここにいかなるメカニズムが働いたのでしょうか???
ちょっと改行しておきますので、そのあいだに少し考えてみてください。
答えはこのあとすぐ!もうまもなく!
黒ひげさんに何が起こったのか?
まず、発売当初のルール「飛び出させたら勝ち!」のゲームプレイを考えてみます。
ルール1「飛び出させたら勝ち」 ゲームスタート!
刺す→はずれ!
刺す→失敗!ハズレだ!
グサッ→また失敗!
グサッ→ミス!失敗だ!なにをしているッ!
刺す→またもやハズレ!もう君には頼まん!
刺す→バ〜ッド!また外したぞ!ニック、国へ帰れ!
グサッ→成功!すぽ〜ん! 君の勝利だ!!!
平均的にいって、上記のような失敗→失敗→失敗→成功、というゲームプレイになるかと思います。では次に、変更後のルール「飛び出させたら負け!」のゲームプレイをみてみましょう。
ルール2「飛び出させたら負け」 ゲームスタート!
刺す→成功!大丈夫だ。
刺す→グッド。セーフだぞ。
グサッ→またまた成功!いいぞ。
グサッ→OK!セーフだ。
刺す→成功!ナイス刺し込み!その調子だ!
刺す→成功!フ〜ゥ、やるじゃない!
グサッ→失敗!ぽぽぽぽ~ん! 黒ひげは星になった!You lose!
平均的には、上記のような成功→成功→成功→失敗、という流れのゲームプレイになりますね。
プレイヤーには成功体験を積ますべし、という昨今のゲーム原理からいえば、失敗続きのルール1よりも、成功ケースが多いルール2のほうが優れてるのは明白ですが、これはじっさい正確にはどういうことなのか、もう少し詳しく見てみましょう。
難易度曲線で比較する
「黒ひげ危機一発」は、ゲームスタートから差しこみ穴に剣を差し込んでいくことで、差しこめる穴の数がどんどん減っていき、それに従いだんだんと当たり確率が上がっていきます。つまり、最初は当たりにくく、ゲームが進むにつれ当たりやすくなる、という単純な数学的原理が働いています。
これを難易度の変化として、ルール1の「飛び出させたら勝ち」という場合の難易度曲線でプロットしてみましょう。
このようにゲーム序盤は当たりが出にくく難易度が高い、ゲームの進展に従い当たりが出やすくなって難易度が低下していく様子が分かります。
つぎに、ルール2「飛び出させたら負け」の場合の難易度曲線はこうなります。
ゲーム序盤はセーフの確率が高いため難易度が低く、ゲームが進むにつれ負けを引く確率が上がり難しくなっていきます。
これをふまえて、件のルール変更でどうなったのか、並べて見てみましょう。
なんということでしょう!
ルール1「飛び出させたら勝ち」からルール2「飛び出させたら負け」にルールを反転させたことで、難易度曲線もみごとに反転してしまいました!まさに劇的!
「黒ひげ危機一発」のルール変更の意味は、とどのつまり、
難易度カーブが適正になるよう修正した
ことにほかならない様子が見てとれます。
まとめ
「黒ひげ危機一発」のゲームルール変更は、じつは難易度調整だったのです。
ゲームを制作するうえで、難易度曲線を調整することは多々あると思いますが、ルールを変更することで難易度を調整するというすさまじいアクロバットになるなんてすごいですね!こういうこともあるんですね〜。
ゲームのルールを変更したり難易度を調整したりする場合は、相互にゲームプレイに影響を及ぼす可能性を十分に承知しておくことが大事だな〜。と、かいぽんはそう思いました。
まあそのほかにも、難易度上昇にしたがいスリルも上昇するとか、ひとりだけの勝者が出るぐらいだったらみんな横並びで負けをひとりだけ作るほうがいいという、どすぐろい足の引っ張り合い日本的ムラ社会の構造的精神性うんぬんが日本市場にマッチした・・・、というような推論もなりたちますよね。いろいろ考えさせられますね(^▽^)
さて今回のお話しはいかがでしたでしょうか。ちょっとした玩具のゲームでも、その面白さの源泉を探ってみることでビデオゲームづくりの参考になったりすることがあるかと思います。たのしいですね!
それではまた。ばいちゃ〜。
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