「わたしがかいぽん大佐である。本日は諸君らに、アクションゲーム制作において開発者本人が初心者プレイを簡易的に再現する、そんなサバイバルテクニックを伝授する。口を開く前と後にサーをつけろ!」
「サー、イエス、サー!」
「そのまえにだ。いわゆる初心者には2種類のタイプが存在する。わかるか?誰か言ってみろ!」
「サー!そのゲームにおける初心者Aと、テレビゲーム自体をあまりさわったことがない初心者Bの、2通りであります。サー!」
「・・・・、よろしい、気に入った。うちへ来てとびだせどうぶつの森をダウンロードしていいぞ。
さて、一般的にいって、ゲームプレイヤーがアクションゲームにおいて、なにかしらの操作行動をとるとき、そのプロセスは3段階に細分化できる。知っているな。言ってみろ、腹から声を出せ!」
「サー!まずゲーム画面からゲーム状況を把握する、次になにをするか脳みそで判断する、そして判断どおりにコントローラを操作する、の3段階であります。サー!」
「・・・・、よくできた糞袋だ!見どころがある。うちへ来てパズドラの超級ダンジョンをクリアしていいぞ。
いいかよく聞け、初心者にミスをさせるのは簡単だ。すべての行動がのろいからな!ゲーム状況の把握から判断までの2段階にまず1.5秒はかかる。最低でも1.5秒かかると思え。そして初心者は判断どおりの操作もできるとは限らない。間違える。それどころかもともとの判断からして間違ってることが多い!わかったか返事をしろ!」
「サー、イエス、サー!」
「タマが自機に向かってきて動かないやつはズブの初心者Bだ!逃げるやつはよく訓練された初心者Aだ!ほんとゲーム序盤は地獄だぜ、フゥーハハハー!」
「サー、フゥーハハハー、サー!」
・・・。
こんにちは、かいぽんです。この調子で文章続けるのはやっぱり大変なので、ふだんの文体に戻します(^_^;)
今回は、難易度調整に関わるお話しです。ゲーム序盤の難易度を初心者向けに簡単にしておくための、ぼくが普段行なっているテストプレイ上のちょっとした実戦テクニックを紹介したいとおもいます。特にアクション系ゲームの制作を対象としたものとなります。
まずは、その必要性の前説からどうぞ。
難易度調整の実態
アクションゲームの制作中には、開発者は死ぬほどテストプレイを行います。それこそ同じ面を100回とか1000回とか遊びます。当然ですが、しぜんプレイの腕が熟練していきます。そうなると、いまプレイしてるステージの難易度がいったい難しいのか簡単なのかだんだんとわからなくなり、ゲシュタルト崩壊して感覚が麻痺してくるようになります。(そしてたいていはゲームが難しすぎる状態になっていく傾向にあります)
これが高次ステージなら多少難しくなってもまあ許容範囲なのですが、ゲーム序盤の場合には問題です。序盤が難しすぎるとなると(開発者本人たちは簡単にしたと思っていてもね!)、初心者はそこでつまづきます。こうなると困ります。
ゲームを作りこむほど同時に難易度も高くなってしまうという自然現象を防止するために、ゲーム序盤を制作期間の一番最後になってから作る!という手法も存在しているぐらいです。とはいえ、しかしふつうはいろいろな理由で、ゲームは序盤から作り始めまることが多いでしょう。
で、通常はモニターテストなどを繰り返し、難易度を適切に調整していくわけですが、モニターテストもそう頻繁に行えるわけではありません。コストがかかるからね!
あるいはあまりゲーム慣れしていない社内の事務員の女性などにテストプレイしてもらうとか、家に持ち帰って嫁に遊んでもらう(いわゆる「嫁テスト」)だとかの方法もあるのですが、そういった”身の回りの初心者”もいずれは枯渇していくので、モニターテスト同様ここぞというときにしか使えません。
そういった数少ないモニターテストのチャンスでバチッと適正に難易度を調整することが、最終的には開発費のコストダウンとゲームの品質向上につながります。そのためにはできるだけモニターテストの前段階で、ある程度目的の難易度に近い状態となっているように(つまり適正な低難易度状態を)キープしておくことが重要となってきます。
いやあ前説が長かったですね。スミマセン。ここまで読んでくれてありがとうございます。いよいよここからが本編です。
初心者のへっぽこプレイを模倣する
さてそういうわけで、ぼくの場合はゲーム序盤がいつのまにか難しくなりすぎていないか、定期的にチェックするようにしています。しかし自分自身はすでに熟練プレイヤーになっているので、さてどうするか。
そのときに行なうのが、ハンディキャッププレイです。己のプレイに制限をつけることで、初心者の判断速度や操作ミスを模倣する、という方法を試しています。つまり初心者のフリをするわけですね。その方法はいくつもあるのですが(あるいはゲームに合わせてその都度適当に編み出すこともあるのですが)、そのうちの代表的な、アラ不思議いつでも誰でも初心者気分を味わえる、そんなステキな技を紹介します。
なお参考までに、仮にあなたがスーパーマリオブラザーズの1−1をテストプレイする、というような状況を想像しつつ読んでいただくと、よりイメージしやすいかと思います。(マリオがお嫌いなら、お好きなアクションゲームを想定していただいて構いません)
1.逆さプレイ
コントローラを逆さまにもってプレイします。初心者の判断速度の遅さと操作ミスを再現しやすいです。
2.クロスハンドプレイ
両手をクロスさせて、左右逆の手でプレイします。コントローラは机などに置きます。判断速度の遅さを少しだけ模倣できます。操作ミスもたまにでます。プレイしながら通常持ちとクロスプレイを交互に入れ替えるという派生技もあります。
3.片手プレイ
片手だけでプレイします。両手を協調させて同時操作することができない(レバー+ボタンの組み合わせ操作のタイミングがズレる)という初心者にありがちな現象を強制的に起こします。なお派生技として、右手の親指で十字キーを担当、小指でボタンを押す、みたいなバリエーションもあります。まあ最近のスマホゲームだと片手プレイが基本なんで使えませんけどね!
4.ガチャガチャプレイ
何秒かに一回、定期的に十字キーやボタンをめちゃくちゃにガチャガチャっと押します。なにをするかわからない初心者特有の謎判断や謎操作などの再現です。
5.足プレイ
コントローラを床に置いて、足でプレイします。ちょっとお行儀がわるい。なおこれはぼくの性癖を表してるわけではないので念のため。あと当然ですがダンスダンスレボリューションには向きませんので念のため。
6.手首プレイ
コントローラを机に置き、手首だけをつかって操作します。繊細な操作がきかないのと、ボタンがうまく押せない状況をシミュレートできます。実践例としては、キャメルトライの制作中、パドルを手首だけで操作して実際に試してました。
7.まばたきプレイ
ゆっくりまばたきしながらプレイします。まばたきの頻度や目を閉じてる間隔は適宜に。画面状況を把握するのに時間がかかる初心者特有の状態を擬似的に再現します。まさに「目をつぶってでもクリアできる」という状況を実践するわけです。
8.飲酒プレイ
職場ではあまりおすすめしません。
9.手放しプレイ
何秒かに一回、定期的にコントローラから手を放します。どうしていいかわからなくてぼーっと立ち尽くす初心者の状況を再現します。
10.複合プレイ
上記のいくつかを同時にあるいは切り替えつつ複合的におこないます。ただしある程度慣れないと実施そのものがむずかしいです。
これらのハンディキャッププレイでは、初心者特有の状況判断の遅さや操作の拙さをある程度再現できます。そしてその状態でもなんとかクリアできるかどうか、などを自己判定します。
ただし、どのぐらいハンディをつければ適切か?という加減は、やはりある程度の経験と勘が必要となります。その経験と勘は、モニターテストで実際の初心者のプレイ(と手元)をたくさん見ることで培われます。
なおぼくは物理量の目安としては、初心者が状況判断にかかる時間はおおむね1.5秒ぐらい、ということを念頭においてハンディプレイを加減しています。参考までに。
まとめ
むーぅ、これはいったい本気なのかネタなのかわからん!という感想をもたれた方もいるかもと思いますが、冗談ではありません、アホに見えるかもしれませんがいたって真面目です。すくなくともぼくはこれ本気で実践しています!
まあ実際にどれだけ効果があるかは、正直いってなんともだったりもしますが(弱気)。ですがハンディキャッププレイを実施することで、初心者のフレッシュな気持ちに近づけることは近づけます。これ重要かな、と。
以上、よそでは聞けないひみつの実戦テクニック紹介でした。どでしたでしょうか。
それじゃあ、まったね〜!